大規模修繕工事の見積額や修繕積立金の値上げ案を見て、「この金額は妥当なのか」「将来、本当に足りるのか」と不安を感じていませんか。
建築資材価格や人件費の上昇により、以前に作成した長期修繕計画では、将来の工事費を十分に賄えないマンションが増えています。
ただし、修繕積立金が高いか安いかは、現在の月額だけでは判断できません。
まず、次の5項目を確認することが大切です。
- 長期修繕計画を最後に見直した時期
- 次回の大規模修繕工事の予定時期と概算額
- 修繕積立金の現在残高と将来の残高推移
- 機械式駐車場や給排水管など、高額な設備更新の有無
- 一時金や借入金を前提とした資金計画になっていないか
この記事では、千葉市のマンション管理組合を念頭に、修繕積立金不足の確認方法と、値上げを検討する際のポイントをマンション管理士の視点から解説します。
修繕積立金が不足する4つの主な原因
修繕積立金が不足する原因は、単に毎月の積立額が低いことだけではありません。
1.建築資材と人件費の上昇
塗料、防水材、鉄鋼などの建築資材に加え、足場費用や職人の人件費も上昇しています。
数年前に作成された長期修繕計画では、現在の工事価格が十分に反映されていない可能性があります。
2.長期修繕計画を長期間見直していない
長期修繕計画は、一度作成すれば終わりではありません。
建物や設備の劣化状況、工事価格、修繕周期などは変化するため、一般的には5年程度を目安に見直すことが望まれます。
3.段階増額積立方式による将来負担の先送り
当初の修繕積立金を低く設定し、数年ごとに値上げする「段階増額積立方式」では、予定どおりに値上げできないと将来の資金が不足します。
値上げのたびに管理組合内の合意形成が必要になることも、大きな課題です。
4.計画に含まれていない工事の発生
給排水管、エレベーター、機械式駐車場、インターホン、消防設備などの更新には、多額の費用がかかります。
これらの工事が長期修繕計画に含まれていなかったり、金額が過小に設定されていたりすると、予定外の資金不足につながります。
最初に確認したい5つのポイント
1.長期修繕計画の作成・更新年月
現在の計画がいつ作成されたものかを確認します。
作成または前回の見直しから5年程度が経過している場合や、最近の建築費上昇、工事実績、建物の劣化状況が反映されていない場合は、見直しを検討する必要があります。
2.次回工事後の修繕積立金残高
工事費を支払えるかどうかだけでなく、工事後にいくら残るのかも重要です。
次回の大規模修繕工事で積立金をほとんど使い切ってしまう計画では、その後の設備更新や緊急修繕に対応できません。
3.将来の収支に赤字がないか
長期修繕計画の収支表を確認し、将来のどの時点で残高が不足するのかを把握します。
「まだ何年も先だから」と放置すると、必要な値上げ幅が大きくなり、区分所有者の負担も重くなります。
4.一時金や借入金が予定されていないか
計画上、一時金の徴収や金融機関からの借入れを前提としていないか確認します。
一時金や借入れが直ちに不適切ということではありませんが、区分所有者への影響や返済計画を含め、慎重な検討が必要です。
5.高額設備の更新が含まれているか
次の設備が計画に含まれているか確認しましょう。
- 給水管・排水管
- エレベーター
- 機械式駐車場
- インターホン
- 消防設備
- 受変電設備
- 照明設備
- 屋上・外壁・バルコニーの防水
特に築年数の経過したマンションでは、外壁塗装や防水工事以外の設備更新が増えていきます。
修繕積立金の目安は「戸数」だけでは判断できない
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、実際の長期修繕計画を基に算出した修繕積立金額について、建物の階数や延床面積別に、平均値と事例の幅が示されています。以下は、そのうち事例の幅を整理したものです。
20階未満のマンション
| 建物の延床面積 | 事例における修繕積立金額の幅 |
|---|---|
| 5,000㎡未満 | 235~430円/㎡・月 |
| 5,000㎡以上~10,000㎡未満 | 170~320円/㎡・月 |
| 10,000㎡以上~20,000㎡未満 | 200~330円/㎡・月 |
| 20,000㎡以上 | 190~325円/㎡・月 |
20階以上のマンション
| 建物の区分 | 事例における修繕積立金額の幅 |
|---|---|
| 20階以上 | 240~410円/㎡・月 |
例えば、専有面積70㎡の住戸で、延床面積5,000㎡未満のマンションの場合、単純計算では月額約16,450円~30,100円が一つの目安になります。
※上記は機械式駐車場に係る修繕工事費を含まない単純計算です。機械式駐車場がある場合は、その台数や設備形式に応じた費用を別途考慮する必要があります。
ただし、この金額はあくまで目安です。
建物の形状、設備の内容、機械式駐車場の有無、これまでの修繕履歴などによって、必要な金額は大きく変わります。現在の積立額だけをガイドラインと比較して、直ちに高い・安いと判断することはできません。
大規模修繕工事の費用を見る際の注意点
大規模修繕工事の費用は、戸数に一定額を掛けるだけでは判断できません。
工事費は、次の条件によって大きく変わります。
- 建物の規模や形状
- 外壁や屋上の面積
- 劣化の程度
- 仮設足場の設置条件
- 工事に含める項目
- 設計監理費や調査診断費
- 工事を実施する時期
- 消費税の取扱い
「1戸当たりの工事費」は概算をつかむには便利ですが、それだけで見積額の妥当性を判断することはできません。
見積書を確認する際は、総額だけでなく、工事項目、数量、単価、仕様、諸経費などを比較することが重要です。
修繕積立金の不足が予想される場合の対応
1.長期修繕計画を現在の工事価格で見直す
最初に必要なのは、将来どの程度不足するのかを明らかにすることです。
現在の残高、毎月の収入、予定工事、工事価格の上昇などを反映し、資金不足が発生する時期と金額を確認します。
2.複数の増額案を比較する
修繕積立金を値上げする場合は、一つの案だけでなく、複数の案を作成することが大切です。
例えば、次のような比較が考えられます。
- 早めに均等な金額へ変更する案
- 数年間かけて段階的に増額する案
- 工事内容や実施時期を見直したうえで増額する案
それぞれの案について、各住戸の負担額と将来残高を示すと、区分所有者にも説明しやすくなります。
3.工事項目と優先順位を精査する
工事をすべて先送りすればよいわけではありません。
建物の安全性や漏水防止に関わる工事は優先する一方、劣化状況によっては実施時期を調整できる工事もあります。
専門家による調査や助言を受けながら、必要性と緊急性を整理することが重要です。
4.早い段階から合意形成を始める
修繕積立金の値上げは、総会直前に提案しても理解を得にくい場合があります。
不足額の根拠、値上げをしない場合の影響、複数の選択肢などを、説明会や広報資料を通じて早めに共有することが大切です。
千葉市のマンションで注意したいこと
千葉市では、海浜ニュータウンをはじめ、1970年代から1980年代に供給されたマンションや団地があり、建物と設備の高経年化が進んでいます。
特に次のようなマンションでは、早めの確認が必要です。
- 築30年以上が経過している
- 長期修繕計画を5年程度見直していない
- 修繕積立金を長期間値上げしていない
- 給排水管やエレベーターの更新時期が近い
- 機械式駐車場を設置している
- 高齢化などにより管理組合の担い手が不足している
- 大規模修繕工事後の積立金残高が少ない
築年数が経過したマンションでは、「次の大規模修繕工事」だけでなく、その後の設備更新まで含めて考える必要があります。
工事見積を見る際の5つのポイントを動画で解説
大規模修繕工事や各種改修工事では、提出された見積書の総額だけを見ても、内容が妥当かどうかは判断できません。
👇イントス公式YouTubeでは、マンション管理組合が工事見積を確認する際の5つのポイントを、分かりやすく解説しています。
修繕積立金の値上げを決める前に
修繕積立金の不足が疑われる場合、最初から値上げ幅を決めるのではなく、長期修繕計画と資金計画の内容を確認することが重要です。
イントスマンション管理事務所では、千葉市を中心に、次のようなご相談に対応しています。
- 長期修繕計画の内容を確認したい
- 修繕積立金の値上げ案が妥当か判断したい
- 管理会社から提案された工事内容を確認したい
- 大規模修繕工事の見積書を比較したい
- 区分所有者への説明方法を整理したい
「まだ管理組合として方針が決まっていない」という段階でもご相談いただけます。
まとめ
修繕積立金が足りるかどうかは、現在の月額だけでは判断できません。
重要なのは、長期修繕計画、現在残高、将来の工事費、設備更新、一時金や借入れの有無を総合的に確認することです。
不足が見込まれる場合も、早めに状況を把握できれば、値上げ方法や工事時期など、複数の選択肢を検討できます。
管理組合内で課題を共有し、将来の負担をできるだけ平準化することが、マンションを長く安心して維持していくための第一歩です。
出典・参考資料
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン」
- 国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
- 千葉県「千葉県マンション管理適正化推進計画」
- 千葉市「千葉市マンション管理適正化推進計画」


※本記事に掲載した金額は一般的な目安であり、個別のマンションに必要な修繕積立金や工事費を示すものではありません。実際の検討に当たっては、建物の状況、設備、修繕履歴、長期修繕計画などをご確認ください。
公開日:2026年3月14日
更新日:2026年9月21日


